料理に光る板長のセンス : 浜紫

初めて九十九里の宿を探してみた。
検索して、評価の高い順に並べたら一番上がこちらでした。
聞きおぼえのない名前だったので、ヘェーと思った。

いままで鴨川近辺の宿ばかり泊まって、こちらはあまり気にしなかったなあ。
旅行サイトの口コミでは特に夕食と清潔感を評価する声が多い。魚だけに偏っていない献立というのも、妻と一緒なのでありがたい。値段も手頃な房総価格。
それじゃ、ここにしよう(^^

白子温泉といって、一応温泉です。地図でみると宿が何軒もかたまっていて、その中の一軒。
九十九里浜から道路２つほど陸側に入ったあたりです。道中で知人のお宅に長居したあと、１７時ごろ到着しました。
ロビーでウェルカム昆布茶をいただいたあと、お部屋へ。そのあとお風呂に入り、部屋でビールを飲みながら夕食までぐだぐだするといういつものパターンです。

さて、時間になり食事処へ。
案内されたテーブルには前菜やお造り、固形燃料の卓上コンロにのった料理などがセットされていました。
ビールを飲んでいたので、ワインのハーフボトルを注文。
この日の料理をお品書きのとおりに記しますと、

・ 前菜　…雲丹豆腐、菊花菊菜白和え、落花生塩ゆで、吹き寄せ盛り（柿サーモン　零余子真丈　秋刀魚煮浸し　衣かつぎ　紅葉かまぼこ）
・ 吸物　…土瓶蒸し（松茸　鶏笹身　海老　鯛　みつ葉　すだち）
・ 造り　…旬のお造り盛り合わせ　妻一式　山葵
・ 煮物　…金目鯛煮付　大根　牛蒡　里芋　木の芽
・ 台の物…帆立　鮭　海老　蛤　湿地　栗　銀杏　薬味　ポン酢
・ 揚げ物…穴子黄身揚げ　蓮根　紅葉麩　青唐　かぼす　抹茶塩
・ 食事　…磯釜飯（浅利　ひじき）
・ 香の物…日の菜　しその実　沢庵
・ 留め椀…豆腐　滑子　浅葱
・ デザート…フルーツ　ケーキ盛り合わせ

でありました。読めないものもあるけれど、まあいいや。
まず目についた茹で落花生。やはり地元で食べるとおいしいです。かわいい鳥の形をした器の中は、菊の白和えと松の実でした。
少しずつの前菜にそれぞれ手をつけると、味付けが上手に考えられていることがわかる。
見かけだけ品数を並べても、味がみな同じだったり、その後の料理とのバランスが悪かったりすると興ざめですが、こちらはそんなことはありません。
お造りも一見して普通ですが、魚がウマイ！
松茸の土瓶蒸し、松茸は小さいですがおいしい。陶板焼きも素材の組み合わせが上手。など、分量や味付けのバランスを考えているなあ、これはセンスだな、と思いました。

金目鯛の煮付けはこれも全体の流れを考えたサイズで、大根や里芋、オクラなどと一緒に甘辛に煮てあります。食べると金目にはうっすら衣がついていて、ひょっとすると揚げ煮？
また煮汁にも少しとろみがつけられています。

穴子の黄身揚げ、穴子のクセをふんわりオブラートに包んだ感じです。おいしいのですが、このあたりでややお腹はいっぱいに…。
と思ってましたら、釜飯が運ばれました。
あさりとひじきの釜飯で、ワタシの好きな食材ばかりなので食べねば！という気になり、やはりおいしいので、味噌汁ともども完食いたしました。
すると、デザートが運ばれてしまいました^^；
キレイに作ってあります。
フルーツ（無花果、梨）のまわりにクコの実。生クリームに小さなブラウニー。プリン？と見えるのは、食べると別のモノで何だかわからなかった。

評判通り、海辺の宿！といった魚づくし感はなく、伊勢エビやあわびなどの派手な食材も使っていません。が、最初から最後まで味わいを楽しめる上手な献立だと思います。
食器もそれぞれきれいだし、たいへん気に入りました。

朝食は夕食に比べれば一般的ですが、満足できるものでした。写真を参照して下さい。
食後のコーヒーを飲みたくて、ロビーにあるセルフのコーヒーをいただきました。陶器のカップで100円は安いのですが、無料か少し高くてもフルサービスのほうが、気分的にはよかったかな。（旅行はひとつのゼイタクなので）

宿そのものについて書くと、建物はあまり新しくありませんがきちんとしており清潔度は高いです。宿泊した部屋は広く、部屋からの眺めはこのへんの一般的風景（近くに山がない畑と民家の平らな土地）なので、絶景というわけには行きません。
湯の黒っぽい温泉は「ナトリウム－塩化物強塩泉」ということですが、あまり好みではありませんでした。大浴場（サウナつき）、露天風呂が広いのはよかったです。

週末ではないわりには宿泊客もけっこう多かったです。この立地を考えると繁盛といっていいのではないでしょうか。接客、料理、清潔度と価格のバランスが評価されているのでしょう。
銚子や勝浦方面で宿選びに迷ったときには、第三の候補としておすすめできると思います。